開院2年目を迎えて-病院長メッセージ-
安佐医師会病院は、令和5年4月1日に開院し、早くも1年が過ぎました。
この開院からの1年間は、本当に目まぐるしい1年でした。新しい仲間、新しい電子カルテ、新しい診療体制、すべてが真新しいもので、舫いを解いて船出をしたものの、海図はどうなっているのやら、羅針盤はどちらに向いているのやら、操舵をどうすればいいものやらで、やっとの思いで港から出たと思った途端に、新型コロナ、インフルエンザの嵐に見舞われ、本当に「ヒリヒリ、ぴりぴり」の毎日でした。
地域包括ケア病棟と緩和ケア病棟で102床、職員102人が、急性期の一般病床のない病院を、高度急性期病院での航海に馴染んでいるクルーが操船するのですから、新たな海域での舵取りは難しく、船はグルグル回るし、クルーは船酔いでフラフラになるなど本当に大変な1年でした。
最初の目標は、地域包括ケア病棟としての形を整えることでしたが、それには、高度急性期病院から下ってくる(ポストアキュートの)患者さんを待つだけではなく、サブアキュート(在宅診療医、介護施設、ケアマネジャー等からご紹介)の直接入院の患者さんの受け入れや在宅医療体制を整える必要がありました。地域から強く望まれて、満を持しての開院と意気こんでいましたが、蓋を開けてみると患者さんが押すな押すなという状態とはほど遠い状態です。そのため、地域包括支援センター、訪問看護ステーション、介護施設、在宅診療医、急性期病院など機会を捉えて訪問活動などを重ね、なんとか、地域包括ケア病棟としての形が整ってきたところです。
つづいての試練は、第三者による病院機能評価の認定でした。緩和ケア病棟としての形を整えるには必須です。これには高度急性期病院の経験豊かな職員達が地力を遺憾なく発揮してくれて、見事3月には開院1年目での機能評価の認定通知をいただくことができました。ようやく緩和ケア病棟としての形も整いました。
開院にあたり、地域包括ケアの拠点となると謳ったものの、医療と介護が接する海域は穏やかな海とはいえず、交わるところはすさまじい潮流がうずまくところであることを再認識する毎日でした。
結果として、この1年間で新規入院患者さん741名、うち、サブアキュート患者さんの受け入れ204名、平均在院日数は31日、という成績でした。とても順風満帆とはいえませんが、地域包括ケア病棟、緩和ケア病棟の体制の確立、病院機能評価の認定を進める中での成績としてはまずまずかと考えております。
さて、2年目にはいりました。目標とするところは次の5点です。
・高度急性期病院が、より一層高度急性期医療に特化・集中できるよう縁の下の力持ちになること。
・在宅診療医、かかりつけ医として診療所を運営しておられる先生方が気軽に利用していただけるような支援病院としてより一層深化すること。
・訪問看護師、ケアマネジャー、民生委員の方々のお力になって、感謝していただけるような病院になること。
・当院のリハビリテーションの実施内容が総合的に退院後の生活機能の維持・改善につながるように関係者間の連携を強化すること。
・ポリファーマシー対策をしっかりと実施しつつ、地域包括支援センターとも連携を図り社会的処方を増やしていくこと。
また、北部医療センター安佐市民病院と連携し、救急患者の「下り搬送」の取り組みを始めていますが、今後、連携を一層強化し、搬送体制を確立していきます。
さらに、地域住民に向けて取り組みを始めた介護予防事業としての「太極拳健康教室」や「よろず相談室」も地域に浸透し始めており、2年目となる今年は、初年度の「ホップ」に続き、しっかりと次の「ステップ」ができるのではないかと考えております。
嵐の中を漂う小舟のようであった1年目から、2年目は帆をしっかりと張り、皆様方の応援・ご支援を帆いっぱいに受けて、地域包括ケアという航路を着実に進んでいく所存です。どうか、よろしくお願いいたします。